2022年11月「過重労働解消キャンペーン」労基署の是正勧告に注意
これまで政府では、過労死等防止対策推進法等に基づき、労働者の過労死等の防止対策に取り組んできました。
しかし、多くの事業所では依然として長時間労働が認められるほか、過労死等の労災認定件数の水準も高いままです。
2020年度の過労死等の労災請求件数は2835件で前年より161件減少しているものの、認定件数は802件と前年より77件増加しています。
このような状況において、厚生労働省は過重労働の解消に向けた取組みを推進するため、2022年11月に「過重労働解消キャンペーン」を実施します。
「過重労働解消キャンペーン」の実施期間は2022年11月1日から11月30日までとなっています。
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過重労働が疑われる事業所に対して重点監督が実施されます
今回の「過重労働解消キャンペーン」で、事業所が特に注意しなければならないのは、重点監督の実施です。
期間中、過重労働が行われていると考えられる事業所に対して、厚生労働省が重点監督を行います。
その結果、労働関連法に関する法律違反や不適切な労務管理が認められた場合には、労基署による是正勧告や行政指導の対象となります。
1年間に2回以上同じ違反について是正勧告を受けた場合は、一定期間ハローワークで求人が出せなくなる等のペナルティを受ける可能性があります。
さらに、違反が重大・悪質と判断された場合には、送検され社名等が公表されることになります。
このように、重点監督により違反が発覚した場合は、重いペナルティが課せられるので、今一度、社内の労働時間管理を見直しましょう。
どのような会社が重点監督を受ける?
厚生労働省の発表によると、「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点管理を受ける可能性があるのは次の2つの事業所です。
- 長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場や各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場等
- 労働基準監督署及びハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業等
1か月あたり80時間を超える時間外・休日労働時間は「過労死ライン」といわれ、病気や死亡に至るリスクが高まるといわれています。
過去に、過労死等の労災請求が行われた事業所や、労基署・ハローワークへの相談が多い事業所、離職率の高い事業所は要注意です。
重点監督の内容は?
厚生労働省による重点監督の内容は主に次の4つです。
- 時間外・休日労働が36協定の範囲内であるか等について確認し、法違反が認められた場合は是正指導します。
- 賃金不払残業が行われていないかについて確認し、法違反が認められた場合は是正指導します。
- 不適切な労働時間管理については、労働時間を適正に把握するよう指導します。
- 長時間労働者に対しては、医師による面接指導等、健康確保措置が確実に講じられるよう指導します。
社内の労働時間管理を見直す場合、チェックするポイントとしては、次のような点があげられます。
- 36協定の届出をきちんと提出しているかどうか
- 36協定の有効期限は切れていないかどうか
- 従業員に36協定で定めた上限以上の残業等をさせていないかどうか
- サービス残業が行われていないかどうか
支店や出張所などが多い企業では、各事業所ごとの労働時間の管理が難しく、本社の知らないところで法律違反が行われているケースもあります。
従業員の労働時間が適正に管理されているか、改めて確認するようにしましょう。
36協定についてもう一度おさらい
各事業所の担当者は、これを機に、もう一度36協定についておさらいをしてみましょう。
まず、原則として労働者の残業や休日労働は法律によって禁止されています。
この制限を解除するには、労使間で「36協定」を締結し、労基署に届出を行う必要があります。
36協定の届出をしたからといって、無制限に残業などができるわけではありません。
通常の36協定では、「月45時間・年360時間」の残業等が上限となります。
ただし、臨時的な特別の事情があれば、特別条項を定めることで、一定の要件を充たせば「年間720時間・月100時間未満」まで上限が延長されます。
担当者としては、自社がきちんと36協定を締結しているか、36協定に特別条項は付されているか、36協定の上限を超えて従業員が残業していないか、しっかりと確認しましょう。
まとめ
2022年11月から1か月間、厚生労働省による「過重労働解消キャンペーン」が実施されます。
この期間、過重労働が疑われる事業所に対して、労働時間などの重点監督が行われる予定です。
違反が見つかった場合、行政指導や是正勧告、悪質な場合は送検や公表のペナルティが課せられます。
各事業所の担当者は、自社の労働時間管理を徹底し、過重労働が起きていないかどうかチェックしましょう。
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