2023年10月|年収130万の壁がなくなる?最長2年まで扶養認定を可能に
2023年9月、政府は日本の労働力不足の要因の1つとされてきた「年収の壁」対策を発表しました。
その中で今回は、年収130万の壁への対策についてわかりやすく解説したいと思います。
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そもそも年収の壁とは?
年収の壁とは、短時間労働者の年収が一定基準を超えることで、課税や社会保険の対象となることで、年収の手取り額に影響がでることをいいます。
例えば、パート労働者の年収が106万円を超えると、社会保険の適用対象となるため、給与から社会保険料が天引きされ、年収の手取り額が減少してしまいます。
そのため、年収の壁を超えないよう労働時間を調整するケース(就業調整といいます)が多く、企業の労働力不足の大きな要因とされてきました。
年収の壁には、年収106万円の壁の他にも、年収額に応じて103万円、130万円、150万円の壁などがあります。
年収130万の壁とは?
年収130万の壁とは、パート労働者の年収が130万円以上になると扶養から外れ、社会保険料の負担が生じて、手取りの年収額が減少してしまうことをいいます。
年収106万円の壁の場合、手取り額は減少しますが、その分将来受け取る年金額などは増加します。
これに対し、年収130万の壁の場合、手取り額が減少するだけでなく、将来の給付額は変化しません。
そのため、パート労働者の就業調整や働き控えの大きな原因になっているのです。
2023年10月、厚労省が年収130万の壁対策を実施
年収130万の壁が、パート労働者の就業調整の大きな要因となる中で、厚労省は対策に乗り出しました。
具体的には、事業主が一時的な収入の増加であることを証明すれば、年収130万円を超えた場合も、被扶養者認定を受けられるようにします。
例えば、人手不足による一時的な労働時間の延長等にともなって、パート労働者の年収が130万円以上になった場合でも、事業主の証明を添付すれば、被扶養者のままでいられるのです。
年収130万の壁はなくなる?
今回の措置によって、パート労働者は年収130万円以上になっても被扶養者として働くことが可能になります。
そのため、年収130万の壁がなくなったと考える方もいるかもしれません。
しかし、今回の特例はあくまで一時的な収入変化に適用されるものです。
そのため、最大で2年間まで(連続2回まで)しか、この特例を適用することはできません。
また、収入の増加が一時的なものでない場合(例えば、時給アップなど)も、この特例を適用することはできません。
年収130万の壁がなくなったわけではありませんので、注意しましょう。
特例はいつから適用される?
厚労省によると、この特例は2023年10月から適用されるとしています。
ただ、具体的な開始時などはまだ明らかにされていないため、今後の厚労省の発表などに注意が必要です。
ちなみに、この制度自体は以前からあったのですが、適用される要件が明確にされていなかったため、ほとんど活用されていませんでした。
そこで、適用されるための要件を明らかにし、事業主や労働者が利用しやすくしたのが今回の取組みとなります。
年収106万円の壁に対して助成金を支給
今回政府は、年収130万の壁だけでなく、年収106万円の壁対策も実施しています。
具体的には、キャリアアップ助成金に新たなコースを創設し、賃上げ等で労働者の年収が106万円を超えた場合に、最大で50万円の助成金を事業主に支給します。
また、年収が106万円を超え、新たに社会保険の適用対象となった労働者に、事業主が手当を支給した場合は、その手当を社会保険の算定から除外することとしています。
このように政府は、労働者が年収の壁を気にせず働ける環境づくりを実施した事業主を支援する取り組みをすすめています。
企業の配偶者手当の見直しを促進
一般的に企業の配偶者手当には、それぞれ年収要件が設定されているため、年収の壁としてパート労働者の就業調整の要因になっています。
そこで政府は、今後、企業に対して配偶者手当の廃止や見直しを促すとしています。
具体的には、各企業で配偶者手当の見直しが進むよう、各地域のセミナーや資料の公表などを実施します。
ただ、配偶者手当の廃止や見直しは、現在受給している労働者にとっては、不利益変更になるため、各企業では慎重な対応が求められます。
制度の抜本的な見直しもすすめる
年収130万の壁への対策は、一時的な年収増加に対応するもので、連続で最大2回までしか適用することができません。
また、年収106万円の壁対策として支給される助成金についても、2026年3月31日までの暫定的措置とされています。
ただし政府は、年収の壁による労働力不足について重大な問題ととらえており、今後は年収の壁を気にすることなく働くことのできる労働環境づくりを後押しするとともに、制度の見直しに取り組むとしています。
まとめ
日本の労働力不足の一因である「年収の壁」への対策が政府によって打ち出されました。
特に「年収130万の壁」では、一時的な年収の増加を事業主が証明することで、被扶養者としての認定が最長2年間受けられるようにするとの方針を明らかにしました。
また、年収106万円の壁に対しては、キャリアアップ助成金に新たなコースを創設し、企業の賃上げなどを促進します。
これらの措置は一時的・暫定的なものとして導入されるものの、政府は労働者が年収の壁を気にすることなく働ける環境の整備や、制度そのものの見直しに向けた取り組みを続けていくとしています。