従業員の名前に変更があった時の社会保険・雇用保険の手続き
結婚や離婚等により、従業員の名前に変更があった時、会社は社会保険・雇用保険の氏名変更手続きを行います。
ただし、マイナンバー制度の導入により、氏名変更手続きが不要になるケースがかなり増えてきました。
今回は、どのような場合に氏名変更手続きが必要になるのか、また、指名変更手続きの流れや必要書類などについて、わかりやすく説明をします。
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社会保険(健康保険・厚生年金)の氏名変更手続き
社会保険の氏名変更手続きについては、会社が加入している健康保険の保険者が、協会けんぽか健康保険組合かによって内容が異なります。
そのため、以下ではそれぞれに分けて説明をします。
協会けんぽに加入している会社の場合
協会けんぽに加入している会社の場合、基本的に、会社側で従業員の氏名変更手続きは必要ありません。
なぜなら、被保険者の氏名が変わったという情報は、日本年金機構から協会けんぽに連携されているためです。
現在、日本年金機構はマイナンバーを活用して、地方公共団体システム機構に、登録者の変更情報の照会を随時行っており、その情報は協会けんぽに連携される仕組みとなっています。
そのため、被保険者が役所で氏名変更の届出をすると、それが協会けんぽの登録データに自動で反映されるため、会社側で個別に氏名変更手続きをする必要がないのです。
協会けんぽでは、日本年金機構から提供された情報をもとに、氏名変更された新しい健康保険被保険者証を発行して会社に送付します。
会社は、協会けんぽから届いた新しい健康保険被保険者証を従業員に渡し、従業員から古い健康保険被保険者証を回収して、協会けんぽに返却しましょう。
氏名変更手続きが必要なケース
協会けんぽの従業員であれば、原則として、会社は氏名変更手続きをする必要はありません。
ですが、これは被保険者の基礎年金番号とマイナンバーとが紐づいていることが前提です。
従業員の基礎年金番号とマイナンバーが紐づいていない場合、氏名などの被保険者情報が協会けんぽに連携されないため、個別の手続きが必要になります。
基礎年金番号とマイナンバーが紐づいていないのは次のようなケースです。
- 長期間海外で暮らしていた日本人でマイナンバーを有していない場合
- 日本に来たばかりの外国人労働者
基礎年金番号とマイナンバーの紐づけが終わっていない従業員の氏名が変わった場合、会社は社会保険の氏名変更手続きをしなければなりません。
氏名変更手続きの内容
従業員の氏名変更手続きは、「健康保険・厚生年金保険 被保険者氏名変更届」という書類を、管轄の年金事務所に提出して行います。
具体的な提出期限はありませんが、被保険者の氏名が変わったら速やかに行う必要があります。
添付書類は、「健康保険被保険者証」です。高齢受給者証、特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用認定証などが発行されている場合は、これらも併せて返却します。
また、被保険者に被扶養者がいる場合、被扶養者の健康保険被保険者証も回収・返却する必要があります。
被扶養者の健康保険被保険者証にも、被保険者の氏名が記載されているためです。
被扶養者の氏名のみが変わる場合は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者氏名変更届」ではなく、「健康保険被扶養者(異動)届/国民年金第3号被保険者関係届」を提出します。
健康保険に加入している場合
健康保険組合に加入している従業員の氏名が変わった場合、厚生年金保険については、基本的に協会けんぽの場合と同じ対応になります。
つまり、マイナンバーと基礎年金番号の紐づけが終わっている従業員であれば手続きは不要、紐づけが終わっていない従業員については、会社は個別に氏名変更手続きが必要になります。
ただ、健康保険については、基本的に氏名変更手続きが必要です。
なぜなら、協会けんぽと異なり、健康保険組合と地方公共団体システム機構との間では、被保険者情報の連携がとれていないためです。
手続きの内容は、基本的に協会けんぽで記載した内容と同じですが、提出先が年金事務所ではなく、会社が加入している健康保険組合となる点に注意しましょう。
雇用保険の氏名変更手続き
雇用保険について、単独の氏名変更は令和2年の法改正により廃止となりました。
そのため、雇用保険の被保険者である従業員の氏名が変わったときは、その被保険者について、他の届出や申請が必要になった際に、併せて氏名変更の届出を行うことになっています。
届出先は所轄のハローワークです。
氏名変更の届出は、次の届出や申請と併せて行ってください。
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 雇用継続交流採用終了届
- 雇用保険被保険者転勤届
- 個人番号登録・変更届
- 高年齢雇用継続基本給付金の支給申請(受給資格確認を含む)
- 高年齢再就職給付金の支給申請
- 育児休業給付金の支給申請(受給資格確認を含む)
- 介護休業給付金の支給申請
それぞれの届出書や申請書には、氏名変更の記載欄があるので、そこに変更後の氏名を記入して届出を行えば氏名変更の手続きは完了です。
外国人の被保険者の場合
被保険者が外国籍の場合、マイナンバーと基礎年金番号が紐づけされていない、または、マイナンバーを持っていないケースが考えられます。
この場合は、会社が「健康保険・厚生年金保険 被保険者氏名変更届」を提出する際に、「厚生年金保険 被保険者ローマ字氏名届」も併せて提出しましょう。
届出をする際には、必ず、在留カードや住民票の写しなど公的書類に記載のある氏名を記入します。
口頭や公的な書類以外で氏名を確認すると、後々トラブルにつながるケースが多いため注意が必要です。
また、この手続きは電子申請で行うことができません。
管轄の年金事務所の窓口に持参するか、郵送で提出をします。
社会保険の申請に関する質問や相談は、社労士の利用がおすすめ
氏名変更の手続きに限らず、社会保険や労働保険に関する質問や相談については、社労士の利用が便利です。
社労士とは、国家資格を持った人事や労務管理の専門家のことで、相談をすれば手続きの流れや注意点について具体的なアドバイスをしてくれます。
また、社会保険の手続きや届出が多く、通常業務の負担になっているという場合は、申請書の作成や届出を会社に代わって行ってくれます。
気になる方は、ぜひ社労士に相談してみましょう。
まとめ
結婚や離婚などにより、従業員の名前(氏名)が変わった場合、会社はその従業員の氏名変更手続きをします。
ただ、最近はマイナンバー制度の導入により、この手続きが不要になるケースが増えています。
どのような手続きをするかは、社会保険と雇用保険、また、協会けんぽか健康保険組合か等によって変わってきます。
従業員から名前の変更があった旨の申し出があったときは、スムーズに対応ができるよう、あらかじめ手続きの流れなどを把握しておきましょう。
社会保険の変更手続きについて、「もう少し詳しく聞いてみたい」「社労士に直接相談したい」という方は、ぜひSATO社会保険労務士法人にご相談ください。