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【2023年版】従業員の賃金アップで会社がもらえる助成金とは?

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目次

近年の物価高騰に対して、賃金の伸びは追い付いておらず、私たちの生活は圧迫されています。

そして企業は、人手不足という深刻な問題に直面しており、このような状況下では、積極的な賃金アップが必要不可欠となっています。

賃金アップの効果には、従業員のモチベーション向上や定着率の向上などがあります。

企業は、適切な報酬を提供することで、従業員はよりやる気を持ち、仕事に対する情熱や努力を高めることができます。

また、賃上げによって採用率や定着率が向上すれば、企業は継続的な人材確保をおこなうことができます。


政府は、労働力確保や生産性向上を促進するために、賃金アップを行う企業に対して助成金を提供しています。

企業はこれらの助成金を活用することで、賃上げによる経費負担の一部を軽減することができます。

そこで今回は、従業員の賃金アップで会社がもらえる助成金についてわかりやすく解説していきます。

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業務改善助成金


業務改善助成金とは、生産性向上に必要な設備投資などを行うとともに、賃金アップに取り組む、中小企業・小規模事業者を支援する制度です。

助成金を受給するための条件を満たした場合、設備投資などにかかった費用の一部が助成されます。

助成金を受給するためには

業務改善助成金を受給するためには、以下の支給要件を満たす必要があります。

  1. 受給対象事業者;国内で事業を営む、労働者数が100人以下の中小企業・個人事業主で、地域別最低賃金と事業場内最低賃金との差額が30円以内の条件を満たす事業場(※1)
  2. 賃金の引き上げ;事業場内最低賃金を一定額以上引き上げることを就業規則などに明記し、引き上げ後の賃金を実際に従業員へ支払うこと
  3. 設備投資などの実施;生産性向上のための機器や設備の導入、コンサルティングの活用や研修の実施などによる業務改善をおこない、それらの費用を支払うこと

これらの支給要件を満たし、事業場単位で助成金の申請をおこないます。

※1:事業場とは、労働者が労働を行う場所や拠点のことです。
具体的には、工場、企業の支店、店舗など、企業や事業者が業務を遂行する場所全般を指します。

業務改善助成金の助成額

助成額は、実際に設備投資などにかかった費用に一定の助成率をかけて算出した金額と、助成上限額とを比較し、低い方の額が支給されます。

2023年度(令和5年度)の助成上限額や助成率は、厚生労働省のウェブサイトで確認できます。

助成上限額は事業場規模や条件によって異なり、助成率も申請を行う事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金によって異なります。


助成上限額


※出典:厚生労働省HP 業務改善助成金より抜粋  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html


助成率


※出典:厚生労働省HP 業務改善助成金より抜粋  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html


例えば、事業場規模50人の事業者が、6人の労働者の賃金額を30円以上引き上げる場合、30円コースの4〜6人の区分に該当するため、70万円が助成上限額となります。

なお、特定の条件を満たす特例事業者は、【助成上限額】表内の10人以上の上限額区分を適用することが可能です。

特例事業者の要件(以下の①~③のいずれかに該当する事業者)

  1. 賃金要件:事業場内最低賃金が920円未満の事業場
  2. 生産量要件:新型コロナウイルスなどの影響により、売上高や生産量などの指標の申請前3か月間の平均値が、前年、前々年または3年前の同じ月と比較して、15%以上減少している事業者
  3. 物価高騰等要件:原材料費の高騰など外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1か月における売上高総利益率または売上高営業利益率が、3%ポイント以上低下している事業者


引き上げる労働者の人数の詳しいカウント方法や詳細な条件については、厚生労働省のウェブサイトやマニュアルをご参照ください。

申請から支給までの手順

業務改善助成金の申請から支給までの手順は以下の通りです。

  1. 『事業実施計画書』および『交付申請書』の提出:助成金を申請するために、『事業実施計画書』と『交付申請書』を都道府県労働局に提出します。
  2. 書類審査と交付決定通知:労働局は提出された書類を審査し、審査が通ると交付決定通知が届きます。通知を受けた後、事業場内最低賃金の引上げや設備投資などを計画に基づき実施します。
  3. 事業完了と報告書の提出:事業完了(経費の支払い含む)後、『事業実施報告書』および『助成金支給申請書』を労働局に提出します。
  4. 実績審査と助成金支払い:提出された報告書を基に、労働局が実績の審査を行います。実績の審査の後、適正と認められれば交付額の確定と助成金の支払いが実施されます。


以上が、業務改善助成金の申請から支給までの一般的な手順です。

助成金の具体的な申請方法や必要な書類については、マニュアルを参照するか、所在地の労働局にお問い合わせいただくことをお勧めします。

助成金が受給できないケース

一定の期間内(交付申請書の提出日の前日から起算して3か月前の日~実績報告手続を行った日の前日または賃金額を引き上げてから6か月を経過した日のいずれか遅い日までの間)に、従業員の解雇や退職勧奨、賃金の引き下げなどをおこなうと、助成金は受給することができなくなってしまいます。

また、交付決定前に助成対象設備の導入を行った場合は助成の対象となりませんので、注意が必要です。

その他にも、労働関係法令に違反している場合や、国または地方公共団体から業務改善助成金と同じような内容の補助金などの交付を受けている場合などは受給の対象ではなくなります。

厚生労働省のウェブサイトや、業務改善助成金のマニュアルに掲載されている不交付要件を確認し、自社の事業場が不交付要件に当てはまっていないか確認してみましょう。

なお、助成金を不正受給した場合には、企業名や事業場名が公表される可能性があり、返還請求が行われることもあります。

不正受給と判断されることの無いよう、業務改善計画や賃金引上計画に変更が発生した際には、適切な手続きを行う必要があります。

『事業計画変更申請書』を提出したり、交付決定を受けた都道府県労働局に相談したりすることが重要です。

2023年度の業務改善助成金における注意点

2023年度の業務改善助成金について、2022年度と比較し、手続きに関して下記2点が変更となっていますので、2022年度に引き続き申請を行う際には注意が必要です。

  1. 事業完了時期の変更:2023年度の事業完了期限は2024年2月28日までとなります。
    ただし、やむを得ない事情がある場合には、2024年3月31日まで延長することも可能です。申請を行う際には、期限に注意しましょう。
    (※2022年度の事業完了期限は2023年3月31日)
  2. 手続きの簡便化:2023年度からは、事業完了後の事業実績報告と支払請求の手続きが一本化されました。
    従来は支払請求書の送付後に支払いが行われていましたが、簡便化されたため、手続きがスムーズになりました。

これらの変更点に注意しながら、2023年度の業務改善助成金の申請手続きを進めてください。

助成金額や対象事業者などの助成内容には変更がないため、従来と同じ要件に基づいて申請を行うことができます。


キャリアアップ助成金


キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者(有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者など)の、企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、賃金引上げなどの処遇改善の取組みを実施した事業主を支援する制度です。

この助成金には、正社員化支援で2コース、処遇改善支援で4コースの全部で6コースが用意されています。

非正規雇用労働者の賃金アップを計画している場合は、処遇改善支援の「賃金規定等改定コース」が活用できます。

「賃金規定等改定コース」について

非正規雇用労働者(有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者など)の基本給を定める賃金規定(賃金テーブルや賃金一覧表も対象)を3%以上増額改定し、その改定された規定を適用した事業主が助成を受けることができる制度です。

助成金を受給するためには

キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」の助成を受けるためには、以下の支給要件を満たす必要があります。

  1. キャリアアップ計画の作成・提出賃金規定などを増額改定する前日までに『キャリアアップ計画』を作成し、最寄りの労働局へ提出していること
  2. 賃金規定等の適用:有期雇用労働者など非正規雇用労働者の基本給を、賃金規定等に定めていること。(※2)
  3. 賃金アップ:定めている賃金規定等を3%以上増額改定し、改定後の規定に基づき6か月分の賃金を支給していること。

※2:なお、賃金規定等の改定ではなく、新たに作成した場合でも、その内容が過去3か月の賃金実態からみて3%以上増額していることが確認できた場合、助成対象になります。

賃金規定等改定コースの助成額

1人当たりの助成額は、下の表のとおりです。

企業規模と賃金の引き上げ率によって、助成額は異なります。


なお、1年度1事業所あたりの支給上限申請人数は100人で、100人までは複数回申請することが可能です。

また、組織内の職務の内容や責任、能力などを客観的に評価し、その職務に従事する労働者の待遇が職務の大きさに適しているか現状を把握する「職務評価」を行います。

この職務評価をおこなったうえで、賃金規定等を増額改定した場合には、中小企業で20万円、大企業で15万円が1事業所1回のみ加算されます。

申請から支給までの手順

キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」における、申請から支給までの手順は以下の通りです。

  1. キャリアアップ計画の作成・提出賃金規定などを増額改定する前日までに『キャリアアップ計画』を作成し、都道府県労働局に提出します。
  2. 取り組みの実施:キャリアアップ計画に基づき、有期雇用労働者などの非正規雇用労働者の基本給を定める賃金規定を、3%以上増額改定します。
  3. 賃金の支払い:取組後、6か月間継続して雇用し、増額改定後の賃金に基づき、賃金を支払います。
  4. 支給申請:6か月分の賃金を支払った日の翌日から起算して、2か月以内に支給する必要があります。
  5. 助成金受給:労働局の審査通過後、助成金を受給することができます。


以上が、キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」の申請から支給までの一般的な手順です。

助成金の具体的な申請方法や必要な書類については、厚生労働省のウェブサイトを参照するか、所在地の労働局にお問い合わせいただくことをお勧めします。

こうすることで、正確かつ最新の情報を入手し、適切な申請手続きを行うことができます。

対象となる労働者

キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」の対象となる労働者は、申請事業主が雇用する次の①~⑤すべてに該当する労働者となります。

  1. 賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3か月以上前の日~増額改定後6か月以上の期間継続して雇用されている有期雇用労働者等
  2. 増額改定した賃金規定等を適用された上で、増額改定前の基本給に比べて3%以上昇給している労働者
  3. 賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3か月前の日~支給申請日までの間に、合理的な理由なく基本給および定額で支給されている諸手当を減額されていない労働者
  4. 賃金規定等を増額改定した日以降の6か月間、当該対象適用事業所において雇用保険被保険者であること
  5. 賃金規定等の増額改定を行った事業所の事業主または取締役の、3親等以内の親族ではない者


以上が、キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」の対象となる労働者についてです。

キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」を上手に活用し、非正規雇用労働者の待遇改善とキャリアアップを支援し、同一労働同一賃金の実現に向けて取り組むことが重要です。

助成金を活用して、公平かつ活気ある労働環境を実現しましょう。


まとめ

中小企業を含めて、賃金アップは容易ではありません。

しかし、全国的に最低賃金の引き上げが進んでいるため、賃金アップを実現する必要があります。

また、近年の企業の人手不足の解決策の一つとして、賃金アップは欠かせないものとなっています。

労働者の賃金アップにより、生産性向上やモチベーション向上、定着率向上を図るために、業務改善助成金やキャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」を活用して、賃金アップに取り組んでみませんか。


ただし、助成金を受給するためには審査があります。

要件を満たさず、書類に不備がある場合には助成金を受給することができません。

そこで、社会保険や労務に詳しい社労士の存在は重要です。

社労士は、就業規則や賃金規定に問題がないか確認するだけでなく、申請までの手続きを代行することも可能です。

キャリアアップ計画の作成段階から、専門家に相談しながら手続きを進めることをおすすめします。

助成金申請の代行をご検討中なら、SATO社会保険労務士法人まで是非ご相談ください。



お気軽にお問い合わせください。