2022年10月改正で育児休業中の社会保険料免除は何が変わる?
今回、「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(2021年法律第66 号)の公布に伴い、2022年10月から育児休業等期間中の社会保険料の免除要件が改正されることとなりました。
そこで今回は“2022年10月改正の育児休業中の社会保険料免除”について、人事担当者としての注意点等も含めてわかりやすく解説をしていきたいと思います。
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知っていますか?育児休業中の社会保険料免除について
育児休業をする人への経済的支援策の一つとして、育児休業中の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)免除制度があります。
会社の従業員から育児休業を取得する申し出があった場合、会社(人事担当者)が届出を行うことで、被保険者本人負担分および会社負担分ともに免除となります。
改正前後での免除要件について
2022年10月の改正後は、育児休業中の社会保険料免除要件が厳しくなります。
どのように厳しくなるのでしょうか。
改正前(現行法)の社会保険料の免除要件
月の末日時点で育児休業を取得している場合 ⇒ 当該月の保険料が免除
- 期間は関係なく、末日のみの取得や末日を含む短期間での取得でも免除
- 一方、月途中で短期間の育児休業を取得している場合は免除とならない
賞与月の末日時点で育児休業を取得している場合 ⇒ 賞与月の保険料が免除
期間は関係なく、末日のみの取得や末日を含む短期間での取得でも免除
一方、月途中で短期間の育児休業を取得している場合は免除とならない
これまで社会保険料免除の目的で、月末のみ育児休業を取得するケースがあり、不公平では?との指摘が多くありました。
そうした不公平を改善するために、2022年10月からは社会保険料の免除要件が変わります。
改正後の社会保険料の免除要件
月の末日時点で育児休業を取得している場合 ⇒ 当該月の保険料が免除
期間は関係なく、末日のみの取得や末日を含む短期間での取得でも免除
月の末日時点で育児休業を取得していなくても、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合 ⇒ 当該月の保険料が免除
“2週間以上”は通算することが可能なので連続取得する必要ない
開始日と終了予定日の翌日が同一月に属する場合のみ適用となるので、前月以前から取得している育児休業は通算対象・免除とならない
賞与月の末日時点の取得、且つ1か月を超える育児休業を取得している場合 ⇒ 賞与月の保険料が免除
“1か月”は暦日で計算されるので土日等も含まれる
このように、毎月の保険料については月末時点で育休取得していなくても、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合に社会保険料免除の対象となる点が追加となっています。
また、賞与保険料については月末時点の取得且つ1か月を超える育児休業の取得が必要と厳しくなっています。
改正の前後では、免除要件が変わるので、育休中の従業員が免除対象となるかの判断が今までよりも難しくなります。
特に、“産後パパ育休”等で短期の育児休業を取得している従業員が免除対象となるかについては気を付けて判断しましょう。
社会保険料免除期間について
育児休業中の社会保険料免除期間は「育児休業等を開始した月の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間」とされています。
社会保険料の免除は月単位のため、日割り計算はありません。
社会保険料の免除を受けると、健康保険の給付は受けられないのでは?と心配する従業員もいるかもしれませんが、給付は続けて受けることができると説明してあげましょう。
また、免除期間分も社会保険料を払ったとみなされ、将来の年金額に反映されることも覚えておきましょう。
社会保険料免除に必要な手続きは?
育児休業中の社会保険料免除の手続きについては、会社(人事担当者)が届出を行うことで、被保険者本人負担分および会社負担分ともに免除となります。
必要な手続き内容については、以下の通りです。
従業員から育児休業の申し出があった場合、「育児休業申出書」で申請を受ける
従業員が育児休業の取得対象者(法令および社内規定)であるか確認する「育児休業申出書」の提出を受けた後、おおむね2週間以内に「育児休業取扱通知書」を作成し、従業員へ交付する
育児休業の取得対象者の条件に非該当のときは、理由を記載して通知人事担当者は「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届(以下「育児休業等取得者申出書」)」を年金事務所または事務センターへ提出
提出時期:育児休業等を取得したとき
年金事務所または事務センターへ提出することで、協会けんぽへの別途届出は不要
自社健保の場合は、「育児休業等取得者申出書」を自社健保の担当窓口へ提出。(自社健保独自の様式があるか否かについては、確認してみましょう。)
次に、届け出た「育児休業等取得者申出書」の育児休業等終了予定年月日と終了日が異なる場合についてです。
予定よりも早く終了する場合
「育児休業等取得者申出書」の“提出年月日と提出者記入欄”“共通記載欄(新規申出)”“B.終了欄(育児休業等終了年月日)”を記入の上、年金事務所または事務センターへ提出
添付書類は特に必要ありません。しかし、自社健保の場合は復職日が分かる出勤簿等の添付が必要なケースもありますので、確認してみましょう。
予定よりも延長する場合
「育児休業等取得者申出書」の“提出年月日と提出者記入欄”“共通記載欄(新規申出)”“A.延長欄(延長したい育児休業等の終了予定年月日)”を記入の上、年金事務所または事務センターへ提出
育児休業終了後の社会保険料について
育児休業終了後は、子どもの保育園への送迎があるため残業ができなくなる場合や時短勤務をする場合が多くあります。
そのような場合は、育児休業前よりも報酬が減ってしまいます。
しかし復職後は、育児休業前の報酬に応じた標準報酬月額で社会保険料を支払わなくてはいけないため、手取りが減ってしまうのです。
このように報酬が減ってしまった人たちを救済する措置として、「育児休業等終了時改定」があります。
この制度は、育児休業等終了日の翌日が含まれる月以後の3か月間に受けた報酬(支払基礎日数が 17 日未満の月は除く)の平均額により決定し、その翌月から改定されるというものです。
ただし「育児休業等終了時改定」は任意の手続きとなるため、会社が必ず手続きしなくてはいけないものではないということは覚えておきましょう。
「育児休業等終了時改定」を行うためには、会社が手続きを行う必要があります。
従業員より「育児休業等終了時改定」を行いたい意思がある場合は、「健康保険・厚生年金保険育児休業等終了時報酬月額変更届」を年金事務所又は健康保険組合に提出しましょう。
まとめ
育児・介護休業法の改正に伴い、産後パパ育休(出生時育児休業)や育児休業等の分割取得が可能となったことで、今後は一層短期で育児休業等を取得する従業員が増えることが見込まれます。
短期の育児休業取得者が増えるということは、免除対象か否かの判断を正確にする必要があり、今までよりも難しく感じるかもしれません。
届出するタイミングで慌てることのないよう、育休の取得期間については従業員とコミュニケーションをとり、しっかりと確認・把握の上で、正確に手続きや給与計算をすることが必要になります。
育児休業期間中は会社からの給与がないので、社会保険料の負担がなくなる保険料免除の手続きは、育休中の従業員にとってとても大切な手続きとなります。
忘れずに、正しく届出を行いましょう。
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