従業員から妊娠・出産の報告を受けたとき会社がとるべき5つの対応
従業員から妊娠や出産の報告を受けた場合、会社のとるべき対応や手続きはたくさんあります。
人事経験の浅い担当者や、設立したばかりの会社の経営者は、手続きに慣れておらず、どのように対応すればいいか、不安に感じる方も多いと思います。
ここでは時系列に沿って、会社がとるべき5つの対応について、解説をします。
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1、従業員の妊娠がわかった時
まず従業員の妊娠がわかった時は、いつから産休に入ることになるのかを確認し、業務の引継ぎや調整を検討していくことになります。
一般的に会社へ報告するのは、安定期となる16週目前後です。
2022年10月の法改正により、育児休業に関する制度等について知らせる、育休の取得の意向を確認するため面談等の措置をとることが義務化となったため、これら2点を実施する必要があります。
社会保険に関する届出・手続きは特段発生しません。
社会保険の手続きではありませんが、市役所で母子手帳を発行してもらうようにしましょう。
今後の手続きに必要となります。
2、産休に入るとき(出産前)
妊娠した従業員が産休に入るとき、会社は「産前産後休業取得者申出書」の作成と提出が必要です。
産前産後休業は、出産予定日の6週間(42日)前から出産後8週間(56日)の間に取得可能です。
産前産後休業期間中の健康保険、厚生年金の保険料負担を軽減するため、保険料免除の申請「産前産後休業取得者申出書」を管轄の年金事務所に提出します。
この届出をすることによって、従業員、事業主ともに休業期間中の保険料が免除されます。
実務上は、出産予定日が分かった時点で届け出し、出産後にお子様の名前、出産した日が確定した時、「産前産後休業取得者変更(終了)届」を改めて届け出しましょう。
3、育休に入るとき(出産後)
出産後、従業員が育休に入るとき、会社は次の手続きが必要です。
- 「育児休業等取得者申出書」
- 「出産手当金申請書」
- 「出産育児一時金請求書」
- 「育児休業給付金支給申請書(初回賃金登録)」
「育児休業等取得者申出書」の手続き
「育児休業等取得者申出書」は産前産後休業時と同様に、育児休業期間中の健康保険、厚生年金の保険料を免除するための申請です。
産前産後休業取得者申出書とは異なり、男性の申し出も可能です。
女性の場合、産休から続いて育児休業を取ることが一般的で、出産後8週間(56日)は産後休業期間となり、育児休業期間は産後57日目からとなるケースが多いので、間違わないように気を付けましょう。
2022年10月の法改正により、これまでの育児休業とは別に、男性育休取得の推進のため、産後パパ育休(出生児育児休業)が施行されました。
従業員が会社に申し出ることで、子の出生後8週間以内に4週間まで休業取得が可能となり、期間内に分割して2回まで休業取得が可能となります。
産後パパ育休は、原則として休業の2週間前までの申し出が必要です。
これにより、配偶者の出産時や、退院時の休業に合わせて柔軟に休業を取得することができるようになり、育休を取得しやすくなりました。
「出産手当金申請書」の手続き
「出産手当金申請書」は女性が出産のために仕事を休み、給与が発生しなかった際の補償として支給されるものです。
出産手当金支給申請書(健康保険組合によって名称は異なります)に出産のために休んだ期間などを記入し健康保険組合へ提出します。
原則として支給額は、一日当たり支給開始日の属する月以前の直近の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額を日額に直した額の3分の2となります。
およそ給与の3分の2と覚えておけばよいでしょう。
「出産育児一時金請求書」
「出産育児一時金請求書」は、出産のためにかかった費用負担をカバーするために請求することができる制度です。
1児につき原則42万円が支給されます。(健康保険組合によっては付加金がある場合があります)
直接支払制度と受取代理制度があり、直接支払制度は、退院時に出産費用が法定給付42万円を超えた分のみ窓口で支払い、法定給付分は病院から健康保険組合へ請求をする制度です。
出産費用が法定の給付額より少なかった場合は、被保険者から健康保険組合へ申請することで差額が支給されます。
受取代理制度は、事前に健保組合へ申請することで、医療機関が本人に代わって健康保険組合に出産育児一時金を申請して受け取る制度です。
どちらを申請するかは従業員が選択しますが、感覚値として直接支払制度を利用する方のほうが多いように感じます。
「育児休業給付金(初回賃金登録)」の手続き
「育児休業給付金(初回賃金登録)」は、育休中の援助と円滑な職場復帰の促進するために、雇用保険から支払われる給付金です。
支給額は「休業開始時の賃金日額×支給日数の67%(6か月経過後は50%)」となります。
休職中は賃金が支払われず、従業員は給付金を頼りにすることが多いので、初回申請と合わせて勤怠、賃金が確定したら速やかに申請を行いましょう。
4、育児休業を延長するとき
育児休業を延長するとき、会社は次の手続きを行います。
- 育児休業等取得者延長申請書
- 育児休業給付金延長申請
「育児休業等取得者延長申請書」の手続き
「育児休業等取得者延長申請書」は保育園に入所できないなどの理由があるとき、1歳6か月または2歳まで育休期間を延長することができるため、保険料の免除のため届け出するものです。
「育児休業給付金延長申請」の手続き
「育児休業給付金延長申請」は、同様に保育所に入所できないため復帰できない場合等に届け出するもので、申請のためには保育園入所府承諾通知の写しの添付が必要となります。
給付金は最大2歳に達する日の前日まで申請が可能です。
5、仕事に復帰するとき
従業員が産休・育休から復帰するとき、会社が必要となる手続きは次の通りです。
- 育児休業取得者等終了届
- 養育期間標準報酬月額特例申出書
- 育児休業終了時報酬月額変更届
「育児休業取得者等終了届」の手続き
「育児休業取得者等終了届」は、育児休業を終了する際に、保険料免除も終了するために届け出るものです。
もともとの届出期間ぴったりで終了する場合は不要です。
「養育期間標準報酬月額特例申出書」の手続き
「養育期間標準報酬月額特例申出書」は、復帰後に時短勤務のため休業時前の標準報酬月額よりも下がってしまった場合、子が3歳までの間は休業前の標準報酬月額に基づいた年金額を将来受け取ることができる制度です。
届出は任意なので、本人に案内をして必要な場合に届け出ましょう。
「育児休業終了時報酬月額変更届」の手続き
「育児休業終了時報酬月額変更届」は、前述同様に時短勤務などで復帰前よりも月変対象となる賃金が一等級でも下がった場合に申請することができます。
申請は任意ですが、通常の月変よりも要件が緩和されているため、申請を希望するのが一般的です。
しかし、復帰後にすぐ第2子の出産を予定している場合や、傷病手当金を申請することを見込んでいる方の場合は、標準報酬月額を下げると給付金も減額となってしまうことから、申請しないケースもあります。
まとめ
従業員が妊娠・出産をした際に、必要となる会社の対応を、時系列順にまとめました。
2022年10月の法改正など、社会の流れとして仕事と育児の両立や、育児休業をとりやすい環境を整え、労働者不足の解消を進めることが必要となります。
会社の経営者や人事の担当者は、各種届出・手続きについて、仕組みや目的などをしっかり理解しておきましょう。