2022年10月施行「産後パパ育休」とは?期間や給付金を分かりやすく解説
育児休業取得率は、女性は80%台で推移している一方、男性では2020年度で12.65%と低水準で推移しています。
政府は、2025年に男性の育児休業取得率30%を達成することを目標としており、これを達成するために2021年6月に改正育児・介護休業法が成立し、2022年4月から順次施行されています。
男性の育休取得向上を目指している今回の改正の中でも、「産後パパ育休」は特に大きなテーマの一つとなっています。
そこで今回は、男性版産休ともいえる「産後パパ育休」ついてわかりやすく解説をしていきたいと思います。
”「最新の法改正」や「人事トレンド」など、人事・労務担当者必見の資料を配布中!”
→こちらから無料でダウンロードできます
「産後パパ育休」とは?「パパ休暇」との違い
「産後パパ育休」とは「出生時育児休業」とも言い、子どもが生まれてから8週間以内に最長4週間まで育休を取得できる制度です。
男性は子どもを産むわけではないので”産休”という制度はありませんでした。
しかし今回の法改正では、女性の産後休業に合わせた期間内に育児休業を取得するので「産後パパ育休・出生時育児休業」は“男性版の産休”とも言われています。
「産後パパ育休」の最大の特徴は、子どもが生まれてから8週間以内であれば、期間内に分割して2回まで育休を取得することができる点です。
例えば、配偶者の出産・退院時に1回取得し、何日か出社した後(8週間以内に)再度取得する等の柔軟な取得が可能なので、長期間仕事を休むのは難しいと感じていた男性・会社にも嬉しい改正点です。
ただし、分割して2回取得する場合には、2回分まとめて申出をすることが必要となります。
そのため、会社の担当者は、従業員から申出があった場合は、取得回数を確認するようにしましょう。
「産後パパ育休」の申出期限は原則として休業の2週間前までとなっています。
ただし、雇用環境の整備などについて、育児・介護休業法で義務づけられている内容を上回る措置の実施等を労使協定で定めている場合は、申出期限を1か月前までとすることが可能です。
パパ休暇制度との違い
現行の「パパ休暇」制度と比べると、“子どもが生まれてから8週間以内に取得”という点、“2回取得できる”という点では同じなので混同しそうですが、取得可能期間が異なります。
「パパ休暇」は、子どもが生まれてから8週間以内に1回取得した場合に、2回目を8週間以降に取得することができる制度です。
8週間以内に2回目を取得できるかどうか、という点が異なるので、この違いについて理解しておきましょう。
「産後パパ育休」が新設されたことで、2022年10月以降は「パパ休暇」は廃止となります。
従業員から申出があった場合は、どちらの制度の対象となるか、きちんと確認しましょう。
「産後パパ育休」の対象となるのはどんな従業員?
「産後パパ育休」は、原則男性従業員であれば取得することができます。
しかし、以下の従業員は対象外となります。
①子どもが生まれてから8週間を経過する⽇の翌⽇から起算して、6か⽉を経過する⽇までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかな有期雇用労働者
②労使協定の締結により対象外にできる下記の従業員
- 入社1年未満の従業員
- 休業の申出日から8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
- 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
産後パパ育休中でも仕事をしたいと従業員から言われたら?
育休中でも仕事をすることができます。
ただし、労使協定を締結していることを前提に、従業員と会社間の合意した範囲内に限るとされています。
また、産後パパ育休中に就業可能な部署等を労使協定で限定することも可能です。
労使協定の例については、厚生労働省のホームページからもダウンロードすることができますので、参考にして作成するようにしましょう。
産後パパ育休中に仕事をする場合、無制限に仕事ができるわけではありません。
就業可能日数に上限があるため、これを超えないように注意しなければいけません。
〈就業可能日数の上限〉
- 休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
- 休業開始・終了予定日を就業日とする場合は、当該日の所定労働時間数未満
産後パパ育休中に従業員が仕事をする際の手続き
- 産後パパ育休中に仕事をしたい従業員の申出
休業中に仕事をしたいと希望する場合は、産後パパ育休の開始予定日の前日までに会社へ条件を申し出ます。(条件;就業可能日・就業可能日における就業可能な所定労働時間内の時間帯等) - 会社の提示
従業員から休業中の仕事について条件の申出があった場合、条件の範囲内で仕事をさせることを希望する日・時間を従業員へ速やかに書面等で提示します。(なお、就業させることを希望しない場合はその旨を提示する) - 従業員と会社間の合意
会社の提示した内容に従業員が合意をした場合、会社は従業員から合意を得た旨、仕事をさせることとした日時、その他の労働条件を書面等で従業員に通知します。
なお、育児休業中は仕事をしないことが原則です。
そのため、会社は休業中の仕事を認めないことも可能で、その場合は労使協定の締結は不要となります。
忘れてはいけないことは、産後パパ育休は子どもを養育するための休業であることです。
子どもの養育という目的を果たせないような形で仕事をすることは、産後パパ育休の趣旨にふさわしくありません。
人事担当者として産後パパ育休の目的を見失わないように注意しましょう。
産後パパ育休中の給付金について
雇用保険の被保険者が産後パパ育休を取得した場合、一定の要件を満たすと「出生時育児休業給付金」の支給を受けることができます。
出生時育児休業給付金の支給要件
- 産後パパ育休開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算12か月以上あること
- 産後パパ育休期間中に仕事をする場合、就業日数が一定の水準以内であること
(産後パパ育休を28日間(最大取得日数)取得する場合は10日以内となり、これより短い場合はそれに比例した日数または時間数以内となります。)
出生時育児休業給付金の支給額
「出生時育児休業給付金」の支給額は育児休業給付金と同様に1日あたり、休業開始時賃金日額の67%です。
ただし、産後パパ育休期間中の仕事に対して会社から賃金が支払われた場合は、賃金額に応じて支給額が調整されるので覚えておきましょう。
出生時育児休業給付金の申請期限
「出生時育児休業給付金」の申請には期限があります。
子どもが生まれてから8週間後の翌日から2ヶ月後の月末までが申請期限となります。
育児休業給付金と同様、会社が「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」を、支給申請を行う日までに管轄の公共職業安定所(ハローワーク)に提出することが必要です。
提出期限を過ぎてしまうと給付金が支給されなくなってしまいますので、提出期限はしっかりと守りましょう。
休業中の社会保険料について
下記の要件を満たし、会社が年金事務所または健康保険組合に届出をすることによって、産後パパ育休中の社会保険料が、被保険者本人負担分および会社負担分ともに免除されます。
- 月の末日が育児休業中である場合
(期間は関係なく、末日のみ取得や短期間のみの取得でも免除) - 月末時点で育休取得していなくても、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合
- 賞与・期末手当等にかかる保険料の免除については、月末時点の取得、且つ1か月を超える育児休業を取得している場合
まとめ
産後パパ育休は、休業開始予定日の2週間前が休業の申出期限となり、さらに、休業期間中に就業するか否かは、休業が開始する前日まで確定しない可能性があります。
これは、仕事や組織体制の調整を、大急ぎで行うことが想定されます。
そうならないためにも人事担当者は、配偶者の妊娠・出産の申し出をした従業員に対する個別の周知・意向確認を丁寧に実施し、従業員とのコミュニケーションを十分に図ることが重要です。
また、産後パパ育休も育児休業と同じように、男性従業員が取得しやすい職場風土づくりが不可欠です。
男性従業員が取得しやすくなるよう、就業規則や育児・介護休業規定等を見直し、男性も育児休業を取得することが当たり前という職場風土づくりをしましょう。
産後パパ育休についてのご質問、ご相談は是非SATO社会保険労務士法人までお問合せ下さい。