雇用保険被保険者資格取得届とは?提出先や書き方のポイントを解説
事業所で労働者を雇用したときは、雇用保険の被保険者資格を取得するため「雇用保険被保険者資格取得届」の提出が必要です。
この手続きは人事業務において頻繁に発生するうえ、手続きが遅れていると、失業給付が減額されるなど、従業員に迷惑がかかってしまう可能性があります。
そのため、事業主・担当者は手続きの流れや、必要書類などしっかりと把握しておく必要があります。
そこで今回は、雇用保険被保険者資格取得届の提出方法や書き方のポイントをわかりやすく解説したいと思います。
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雇用保険被保険者資格取得届とは?
会社は、雇用した労働者が雇用保険の加入要件を満たす場合、事業主や労働者の意思に関係なく、原則としてその労働者を雇用保険に加入されなければなりません。
このときに必要となる書類が「雇用保険被保険者資格取得届」です。
労働者を雇用した事業主は、雇用日の属する月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出して資格取得の確認を受けなければなりません。
この届出を怠ると、労働者が失業してしまった際に、支給される失業給付の額などに影響がでる可能性があるため、注意が必要です。
そもそも雇用保険とは?
雇用保険とは、労働者が失業した場合や、教育訓練を受けている方に必要な給付を行う制度です。
労働者が失業してしまうと、収入がなくなってしまい、これまで行っていた生活がままならなくなってしまったり、再就職するための活動ができなくなってしまう可能性があります。
そこで、労働者が再就職するまで、生活や就職活動の安定を図るための援助を行うのが雇用保険の目的です。
また、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上等の雇用対策も行っています。
雇用保険の加入条件とは?
雇用保険は、雇用保険の適用事業所に雇用されており、以下のすべてに該当する労働者全員に原則として適用されます。
- 週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
正社員、パートタイム、アルバイトなど雇用形態に関わらず、上記に該当した場合は強制的に被保険者となります。
雇用保険の適用除外になるケース
事業主やその同居親族、法人の役員などは原則として雇用保険の被保険者となりません。
ただ、事業主の指揮下にあって、労働者と同様の条件・身分で働き賃金が支払われている場合は役員等であっても被保険者として扱われるため、資格取得の手続きが必要となります。
また、労働者の雇用条件等によっては、雇用保険の適用除外になる場合があります。
適用除外となるのは、次のいずれかに該当する場合です。
- 1週間の所定労働時間が20時間未満の場合
- 31日以上継続しての雇用が見込まれない場合
- 季節的な短期雇用である場合
- 昼間学生である場合
- 船員や漁船で働く場合
- 国家公務員や地方公務員など、自治体で雇用される場合
なお、非常勤の公務員や1年を通して船員として雇用が認められた場合など、上記の中でも雇用保険が適用される場合があるため、注意が必要です。
雇用した労働者が複数の会社で働いている場合
ダブルワークなど、雇用した労働者がすでに別の会社と雇用契約を結んでいるケースもあります。
労働者が複数の会社で雇用保険の加入要件を満たしている場合、賃金を多く支払っている会社の雇用保険に加入することになります。
そのため入社の際は、別会社での雇用の有無や、その会社の給与支払状況等を事前に労働者に確認しましょう。
雇用保険被保険者資格取得届の手続き
雇用保険被保険者資格取得届は、以下のタイミングで提出が必要になります。
- 雇用保険の加入条件を満たす労働者を雇い入れた場合
- それまで加入条件を満たしていなかった従業員が雇用条件の変更等により加入条件を満たすようになったとき
雇用保険の適用対象である労働者を初めて雇用した場合は、雇用保険被保険者取得届と一緒に「事業所設置届」の提出が必要になるので注意しましょう。
手続きの内容・方法
雇用保険被保険者資格取得届の手続き方法は以下になります。
必要書類 | 雇用保険被保険者資格取得届 |
目的 | 新たに雇用した労働者の雇用保険被保険者資格を取得する |
提出先 | 事業所を管轄するハローワーク |
提出期限 | 被保険者となった日の属する月の翌月10日 |
添付書類 | <事業所が初めて届出を行う場合> 賃金台帳 労働者名簿 出勤簿(タイムカード) 他の社会保険の資格取得関係書類 雇用期間を確認できる書類(雇用契約書等) |
提出方法 | 郵送・窓口持参・電子申請 |
手続きの際には、雇用する労働者のマイナンバーを記載する必要があります。
また、過去に雇用保険に加入していた労働者は、被保険者番号を確認して記載します。
労働者が初めて雇用保険に加入する場合は被保険者番号を持っていないため、空欄のままで問題ありません。
申請が受理されると「雇用保険被保険者証」と「被保険者資格取得確認通知書」が交付されますので、担当者はこの通知書を被保険者本人に確実に交付してください。
ハローワークの受理後の流れ
雇用保険被保険者資格取得届が管轄のハローワークに受理されると、次の書類が交付されます。
- 雇用保険被保険者資格喪失届・氏名変更届
- 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)
- 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)
- 雇用保険被保険者証
1と2は会社で大事に保管し、3と4については従業員に渡します。
提出した書類に誤りがあった場合
手続きの申請中、または手続きの申請後に、雇用保険被保険者資格取得届に記載した内容に不備があった場合は、「雇用保険被保険者資格取得(喪失)届訂正(取消)願」を提出する必要があります。
訂正の手続きについて、法令上の期限は特に定められていませんが、手続きが遅れると精算処理が必要になるなど、面倒になる可能性があるため、気づいたら次第なるべく早めに手続きを行うようにしましょう。
雇用保険被保険者資格取得(喪失)届訂正(取消)願を提出する際は、書類の添付が必要になりますが、訂正をする箇所によって添付すべき書類が違うため注意が必要です。
例えば、生年月日の訂正をしたい場合は、労働者の生年月日がわかる年金手帳や健康保険証、運転免許証などの添付が必要になります。
さらに、ハローワークによって求められる書類が違う場合もあるため、申請前に一度所轄のハローワークに確認しましょう。
提出が遅れてしまった場合
手続き忘れや情報が揃わなかったなどの理由で提出が6か月以上遅れてしまった場合、ハローワークから「遅延理由書」の提出を求められることがあります。
遅延理由書は法律で決まった様式がないため、必要な情報を記入した任意の形式で提出をしてください。
また、確認のために賃金台帳や労働者名簿などの持参が必要な場合があるため、事前にハローワークに問い合わせ確認をしましょう。
過去に遡って資格取得する場合
手続き洩れ等、何らかの理由によって雇用保険被保険者資格取得届の提出をしていなかった場合、期限を過ぎていても届出は受理され、過去に遡って被保険者資格を取得することができます。
ただ、取得日から6か月以上届出が遅れてしまった場合、遅延理由書に加えて取得日から3か月分の賃金台帳や出勤簿等の追加書類の提出が求められます。
以前、遡及できる期間は「原則として2年前まで」とされていますが、法改正により、給与から雇用保険料が天引きされていたことが明らかな場合に限り、例外として2年を超えて遡って手続きすることが可能です。
手続きの際には、雇用保険料が給与から天引きされていたことを証明するための書類(給与明細等)が必要となるので注意しましょう。
まとめ
雇用保険の適用事業所で労働者を雇用した場合、事業所は「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
手続きが遅れてしまうと失業給付の際に労働者に不利益が生じる可能性があり、トラブルにつながりかねません。
また、労働者を雇用する際には、雇用保険の手続きだけでなく事業所内で様々な手続きも発生するため、並行していくつもの手続きを行うことになります。
担当者は事前に提出期限や添付書類の確認をするなど、期限内にスムーズに手続きを進められるようにしましょう。
もし雇用保険被保険者資格取得届の提出手続きにお困りであれば、SATO社会保険労務士法人に是非ご相談ください。