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【2023年版】業務改善助成金とは?申請方法や貰える条件をわかりやすく解説

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目次

政府は、経済政策や雇用政策を通じて、賃金引き上げや労働環境の改善を支援する取り組みを行っています。

しかし、企業としては、現場の生産性が上がらないと賃金引き上げに反映させることが難しいため、賃金引き上げに取り組めていない企業も少なくありません。

そのため政府は、生産性向上のために設備投資をする事業場に対して、助成金を提供しています。

また、コロナ禍で売り上げが落ちていた時は設備投資が難しかった事業場もありましたが、売り上げが回復した今なら設備投資が可能な事業場も増えています。


そのような事業場や企業には、ぜひ導入していただきたいのが『業務改善助成金』です。

本記事では、申請方法や助成金をもらえる条件について、わかりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

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業務改善助成金とは


業務改善助成金とは、事業場(※1)内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、生産性向上に必要な設備投資を行った場合、設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度です。

※1.事業場とは、労働者が労働を行う場所や拠点のことを言います。
具体的には、店舗、企業の支店、工場など、企業や事業者が業務を遂行する場所全般を指します。

対象となる事業場

次の1~3の要件を満たした事業者は、事業場内最低賃金の引き上げ計画と設備投資等の計画を立て、事業場単位で助成金の申請をおこないます。

  1. 中小企業・小規模事業者であること
  2. 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内であること
  3. 従業員の解雇や退職勧奨、賃金の引き下げなどの不交付事由がないこと

上記1~3について、詳しく解説していきます。

1.中小企業・小規模事業者であること

中小企業・小規模事業者とは、以下のA又はBの要件を満たす事業者を言います。

業種A資本金の額または
出資の総額
B通常使用する企業全体の労働者数
一般産業(下記以外)3億円以下の法人300人以下
卸売業1億円以下の法人100人以下
サービス業5,000万円以下の法人100人以下
小売業5,000万円以下の法人50人以下

2.事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内であること

例えば、地域別最低賃金が900円のところで、事業場内最低賃金910円や930円の従業員がいた場合、対象となります。

3.従業員の解雇や退職勧奨、賃金の引き下げなどの不交付事由がないこと

従業員の解雇や退職勧奨、賃金の引き下げのほかにも、様々な不交付要件があります。

国または地方公共団体から業務改善助成金と同じような内容の補助金などの交付を受けている場合なども不交付要件の一つです。

詳しくは、厚生労働省のウェブサイトや、業務改善助成金のマニュアルに掲載されている不交付要件をご確認ください。

受給対象となる取り組み

業務改善助成金を受給するためには、以下の対象となる取り組みを行う必要があります。

  1. 賃金引き上げ計画を策定すること:雇入れ後3か月を経過した従業員のうち、事業場内で最も低い時間当たりの賃金額を一定額以上引き上げる計画を策定する
  2. 事業場内最低賃金を引き上げること:就業規則などに、引き上げ後の賃金額を明記し、引き上げ後の賃金を実際に従業員へ支払うこと。
  3. 生産性向上に必要な設備投資などの実施:生産性向上のための機器や設備の導入、労働能率の増進のためのコンサルティングの活用や研修の実施などによる業務改善をおこない、それらの費用を支払うこと。

2や3の取り組みは、『事業実施計画書』を申請し、交付決定後に取り組む必要があります。

交付決定前におこなった設備投資などは、助成の対象となりませんので注意が必要です。

対象となる経費について

対象となる経費については、助成対象事業場における生産性向上および労働能率の増進に必要な設備投資などで、具体的には下記の表の経費区分が対象です。

生産性向上等に資する設備投資等の経費区分
謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、原材料費、機械装置等購入費、造作費、人材育成・教育訓練費、経営コンサルティング費、委託費

また、“特例事業者”に該当する場合、助成対象となる経費が拡充するほか、広告宣伝費や改築費なども生産性向上に必要な取り組みに関連する経費として助成の対象となります。

助成対象となる経費の拡充や具体例については、業務改善助成金の申請マニュアルや、生産性向上のヒント集などにも掲載されています。

自社の実施しようとしている取り組みが対象となるか調べたい際には、ぜひ一度ご確認ください。

なお、コスト削減を目的とした経費や職場環境を改善するための経費などは、本助成金の対象とはなりませんので、ご注意ください。

※参考;厚生労働省HP『業務改善助成金 申請マニュアル』

※参考;厚生労働省HP『生産性向上のヒント集』

特例事業者について

業務改善助成金において、以下の1〜3のいずれかに該当する事業者は、特例事業者という扱いとなります。

  1. 賃金要件:事業場内最低賃金が920円未満の事業場
  2. 生産量要件:新型コロナウイルス感染症などの影響により、売上高や生産量などの指標の申請前3か月間の平均値が、前年、前々年または3年前の同期と比較して、15%以上減少している事業者
  3. 物価高騰等要件:原材料費の高騰など外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1か月における売上高総利益率または売上高営業利益率が、前年同月と比較して3%ポイント以上低下している事業者

なお、助成対象経費の特例的な拡充が受けられる特例事業者は、上記の②または③に該当する事業者となります。


助成額

受給対象となる取り組みの要件を満たした場合、生産性向上に必要な設備投資などにかかった費用に一定の助成率をかけて算出した金額、または助成上限額のいずれか低い方の額が支給されます。

2023年度(令和5年度)の助成上限額や助成率は、下記の表のとおりです。

助成上限額は事業場規模や条件によって異なり、助成率についても、申請を行う事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金によって異なります。

助成上限額

コース区分事業場内
最低賃金の
引き上げ
引き上げる
労働者数
助成上限額
事業場規模
30人以上の
事業者
事業場規模
30人未満の
事業者
30円
コース
30円以上1人30万円60万円
2~3人50万円90万円
4~6人70万円100万円
7人以上100万円120万円
10人以上※120万円130万円
45円
コース
45円以上1人45万円80万円
2~3人70万円110万円
4~6人100万円140万円
7人以上150万円160万円
10人以上※180万円180万円
60円
コース
60円以上1人60万円110万円
2~3人90万円160万円
4~6人150万円190万円
7人以上230万円230万円
10人以上※300万円300万円
90円
コース
90円以上1人90万円170万円
2~3人150万円260万円
4~6人270万円290万円
7人以上450万円450万円
10人以上※600万円600万円

※出典:厚生労働省HP 業務改善助成金より抜粋  業務改善助成金|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 
※上記リンク<助成上限額>の表を基に作成

助成率

事業場内
最低賃金
870円未満870円以上
920円未満
920円以上
助成率9/104/5(9/10)3/4(4/5)

※出典;厚生労働省HP 業務改善助成金 申請マニュアルより抜粋
※上記リンク<表3:助成率>を基に作成

なお特例事業者は、【助成上限額】表内※の10人以上の上限額区分を適用することができます。

事業場内最低賃金の引き上げおよび計算方法について注意が必要な点

事業場内最低賃金の引き上げを行う際には、以下の点に留意するとともに、労働局や専門家に確認することが重要です。

  1.  事業場内最低賃金を引き上げる際には、全従業員の賃金を新事業場内最低賃金以上まで引き上げること
  2. 事業場内最低賃金の従業員以外でも、申請コースの額以上の賃金引き上げがある場合、引き上げ人数にカウントされる可能性があるため、具体的なカウント方法については、労働局や専門家に確認すること
  3. 事業場内最低賃金などの計算方法については、以下を確認すること
    ・日給の場合:1日の所定労働時間で賃金額を割り、時間あたりの賃金額を算定する
    ・月給の場合:1か月の所定労働時間で賃金額を割り、時間あたりの賃金額を算定する
    ・歩合給を含む場合:申請直近の1年間の歩合給の合計額を、その間の総実労働時間で割り、割った額に固定給の時間あたりの額を加えて算定する
    ・臨時支給や時間外労働に対する割増賃金、通勤手当などは最低賃金に含まないため、計算する際には注意すること

これらの注意点に加えて、引き上げる労働者数の詳細なカウント方法や具体的な引き上げ例については、厚生労働省のウェブサイトや業務改善助成金のマニュアルを参照してください。

必要な情報を確認して、助成金を活用した適切な賃金引き上げに取り組むことをお勧めします。

申請手続き


業務改善助成金を利用する際に必要な、申請手続きについて詳しく解説していきます。申請から支給までの手順は、以下の通りおこないます。

  1. 『事業実施計画書』および『交付申請書』の提出:助成金を申請するためには、『事業実施計画書』と賃金引き上げ計画を記載した『交付申請書』を作成し、都道府県労働局に提出します。
  2. 書類審査と交付決定通知:提出された書類は労働局によって審査され、審査が通ると交付決定通知が届きます。
    通知が届き次第、計画に基づいて事業場内最低賃金の引上げや設備投資などを実施します。
    交付申請から交付決定までは、約1か月程度かかります。
    その間(=交付決定前)に設備投資をおこなっても、助成金の対象とはならないため注意しましょう。
  3. 事業完了と報告書の提出:計画に基づいて、事業場内最低賃金の引上げや設備投資などを実施した後(経費の支払い含む)、『事業実施報告書』および『助成金支給申請書』を作成し、労働局に提出します。
  4. 実績審査と助成金支払い:提出された報告書を基に、労働局が実績の審査を行います。
    審査の後適正と認められれば、交付額が確定し、助成金の支払いが実施されます。

※2022年度までは、支払請求書の送付後に支払いが行われていましたが、2023年度からは、事業完了後の事業実績報告と支払請求の手続きが一本化されています。

手続きが簡便化され、スムーズに行えるように変わっていますので注意しましょう。


以上が、業務改善助成金の申請から支給までの一般的な手順です。

なお、業務改善計画や賃金引上計画に変更が発生した際には、『事業計画変更申請書』の提出が必要です。

また、事業計画を中止する際や事業完了に遅れが見込まれる際にも、内容に合った書類の提出が必要です。

必要な書類は迅速に提出し、適切な対応を取りましょう。

助成金の具体的な申請方法や添付書類については、業務改善助成金のマニュアルを参照するか、所在地の労働局にお問い合わせいただくことをお勧めします。

スケジュール

業務改善助成金の、申請期限、事業完了期限、『事業実施報告書』『助成金支給申請書』の提出期限については、以下のとおりです。


申請期限:2024年1月31日(→注意①)

事業完了期限:2024年2月28日(→注意②)

『事業実施報告書』『助成金支給申請書』の提出期限:事業完了日から起算して1月を経過する日または翌年度4月10日のいずれか早い日まで


※注意①:予算の範囲内で交付が行われるため、申請期限内に募集を終了する場合もあります。

※注意②:2022年度の事業完了期限は、2023年3月31日と年度末でしたが、2023年度は2024年2月28日までに変更となっています。
やむを得ない事情がある場合には、2024年3月31日まで延長することも可能ですが、申請を行う際には、期限に注意しましょう。



まとめ

企業の基本給は、一度上げると簡単には下げることができないため、賃金引き上げに対して消極的な企業も少なくありません。

しかし、賃金引き上げにはメリットも多く、人材獲得競争で優位に立つことができる点もその一つです。

また、従業員のモチベーション向上や定着率の向上なども、賃金引き上げの効果といえます。


少子高齢化の影響により、人手不足という深刻な問題に直面している企業も少なくありません。

そのため、人材獲得競争で優位に立つためにも、業務改善助成金を活用して、従業員の賃金引き上げに取り組むことが重要です。

助成金申請をご検討中の事業者様は、SATO社会保険労務士法人までご連絡ください。



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