月末退職者の社会保険料は2か月分徴収しなければならない?
従業員が月末退職をする場合は、社会保険料の徴収について注意が必要です。
なぜなら、場合によっては、退職する従業員の給与から社会保険料2か月分を徴収しなければならないケースがあるからです。
間違って控除してしまうと従業員とトラブルになる可能性もあるため、会社の経営者や担当者としては、退職者の社会保険料の扱いについて、正確に理解しておくことが必要です。
そこで今回は、退職者の社会保険料をどのように扱うべきか、わかりやすく解説をします。
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社会保険料が発生する期間を理解しましょう
退職者の社会保険料をどのように取り扱うかを知るには、まず、社会保険料がいつからいつまで発生するのか、発生期間を理解することが重要です。
社会保険料が発生するのは、「被保険者資格を取得した日の属する月」から、「資格を喪失した日の属する月の前月まで」です。
ここで注意が必要なのは、「資格を喪失した日」とは退職日当日のことではなく、退職日の翌日のことをいいます。
そのため、月末退職者の場合は、退職日の属する月まで社会保険料が発生することになります。
例えば、10月30日退職日のケースでは、資格喪失日は10月31日となるため、社会保険料が発生するのは9月分までです。
しかし、10月31日退職日のケースでは、資格喪失日が11月1日となるため、社会保険料は10月分まで発生します。
社会保険料には、日割りという制度はありません。
そのため、退職日が1日違うだけで、社会保険料が1か月分変わるので注意しましょう。
給与支払日が当月払いの場合は2か月分の社会保険料を徴収
通常、社会保険料は従業員の毎月の給料から前月発生分を徴収します。
そのため、会社の給与支払日が当月払いの場合、月末退職者の給与から2か月分の社会保険料を控除しなければならない可能性があります。
どういうことか、ケースを分けて解説します。
月末締め・翌月払いの会社
例えば、給与が月末締め・翌月15日払いの会社の従業員が、10月31日に退職したとします。
10月31日が退職日の場合、上記で説明したとおり、社会保険料は10月分まで発生します。
この場合、最終の給与支払いは11月15日となり、10月分の社会保険料はここから徴収するので、通常通り1か月分の徴収のみとなります。
月末締め・当月25日払いの会社
同じ例で月末締め・当月25日払いのケースで見てみましょう。
通常、10月25日に支払う給与からは、9月分の社会保険料を徴収します。
しかし、従業員が10月末で退職する場合、11月に支払う給与がなく、10月分の社会保険料を徴収することができなくなってしまいます。
そのため、この場合は10月25日の給与から、9月分と10月分の2か月分の社会保険料を徴収することになるのです。
このように、当月払いの会社の従業員が月末退職する場合は、原則として、2か月分の社会保険料の徴収が必要になる、という点に担当者は注意しておきましょう。
従業員に対して事前に説明しておきましょう
ここまで説明したとおり、給与当月払いの会社の従業員が、月末退職する場合、最後の給与から社会保険料が2か月分徴収される可能性があります。
この場合、会社の担当者としては、従業員に対して社会保険料の徴収について、しっかり説明をしておきましょう。
退職者によっては、最後の給与がいくらになるか、その後の生活を送る上でとても重要です。
あとから、労使間でトラブルになることを避けるため、きちんと理解してもらいましょう。
残業代の支給などがある場合
給与当月払いの会社であっても、従業員の退職月に残業が多く発生したため、退職月の翌月に残業代を支給するケースもあります。
退職の翌月の支給から社会保険料を徴収できるのであれば、退職月に2か月分の社会保険料を徴収する必要はないかもしれません。
ただ、末日にならないと残業代が確定せず、社会保険料を徴収できるかどうかが明らかでないため、退職月に2か月分をまとめて徴収するのが一般的といえます。
2か月分の徴収を忘れた場合
月末退職者の場合は、2か月分の社会保険料の徴収が必要になるケースがあります。
では、2か月分徴収するのを忘れ、1か月分しか徴収しなかった場合はどうすればよいのでしょうか
通常、社会保険料を徴収し忘れた場合は、翌月の給与から天引きするのが一般的です。
しかし、退職した場合には、翌月の給与が発生しないため、天引きすることができません。
そのためこの場合は、すぐに従業員に連絡をとって、現金等で支払ってもらう必要があります。
もし、従業員と連絡が取れない場合は、会社で負担しなければならない可能性もあります。
このように、退職時の社会保険料の徴収忘れはトラブルにつながる可能性があるので、かならずきちんと徴収するようにしましょう。
社会保険料に関する相談は社労士が便利
社会保険料について、わからないことや気になることがある場合、社労士に相談をすると便利です。
社労士は、人事・労務の国家資格保有者のことをいい、社会保険に関する専門家です。
相談をすれば、具体的なアドバイスをしてくれるでしょう。
また、社会保険に関する手続きについて、忙しくて手が回らないという事業者様は、そのまま手続きの代行を依頼することも可能です。
社会保険業務は、社労士を使って効率化を図りましょう。
まとめ
従業員が退職する場合、最後の給与から2か月分の社会保険料を控除しなければならないケースがあります。
それは、「給与の支払を当月払いとしている会社であって、従業員の退職日が月末のケース」です。
社会保険料を2か月分控除する場合は、従業員が驚かないよう、あらかじめ仕組みなどをきちんと説明し、理解してもらうことが重要です。
従業員の退職時は、資格喪失等さまざまな手続きが発生しますが、社会保険料の控除も重要な手続きなので、忘れないようにしましょう。
労働保険の届出内容について、「もう少し詳しく教えて欲しい」「社労士に相談したい」という方は、ぜひSATO社労士法人にお気軽にお問合せください。