【令和5年版】業務改善助成金の対象者は?個人事業主も貰える?
アフターコロナで、コロナ禍前の生活に戻りつつあり、マスクを着用する機会が減少している方も多いのではないでしょうか。
コロナ禍で我慢していたことを楽しみたいと思っている人も多く、“リベンジ旅行”や娯楽、外食などを楽しむ方も増えています。
しかしながら、ガソリン価格が12週連続で高騰しており、その他の食品なども値上げラッシュが続いています。
こうした状況の中、令和5年7月28日に厚生労働省より中央最低賃金審議会にて取りまとめられた『令和5年度地域別最低賃金額改定の目安について』が公表されました。
消費者物価の高騰が続いていることを踏まえて調整が行われ、もし各都道府県で目安通りに引き上げが行われれば、全国平均で初めて時給1000円台に達する見通しとなっています。
今回の審議会の答申では、業務改善助成金についても言及されており、対象となる事業場の拡大と、最低賃金引上げの影響を強く受ける小規模事業者が助成金を活用しやすくなるよう、より一層の支援拡充が強く要望されています。
そこで今回は、今年度の業務改善助成金の対象者について詳しく解説していきます。
特に、個人事業主が助成金を受ける資格を持つのか否かについても詳細に触れていきます。
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業務改善助成金の目的
業務改善助成金とは、生産性向上に必要な設備投資などを行うとともに、事業場で最も低い時間給(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げた場合、設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。
助成金を受給するためには、一定の要件を満たす必要があり、支給要件を満たした場合、事業場単位で助成金の申請をおこないます。
支給要件を満たした場合、生産性向上に必要な設備投資などにかかった費用に一定の助成率をかけて算出した金額、または助成上限額のいずれか低い方の額が支給されます。
事業場とは?
事業場とは、労働者が働く場所や拠点です。
労働基準法では、「同一の住所で従業員が働いており、独立して業務を行っている場所」と定義されています。
これは主に場所の考え方に基づいており、同じ場所にある場合は通常1つの事業場とされ、場所が分散している場合は別々の事業場と見なされます。
具体的には、工場や企業の支店、店舗など、仕事をする場所全体を指します。
業務改善助成金の支給要件
業務改善助成金を受けるためには、以下の3つの支給要件を満たす事業者が対象となります。
①中小企業・小規模事業者であること
以下の表は、中小企業基本法によって定められている、中小企業と小規模事業者の定義です。
(中小企業基本法では、小規模事業者は正式名称「小規模企業者」として記載されています。)
中小企業においては、資本金の額または出資の総額・常時使用する従業員の数、いずれかの要件を満たす場合、中小企業となります。
小規模事業者においては、資本金や出資総額に関する基準はなく、従業員数が基準となります。
業種 | 中小企業 | 小規模事業者 | |
資本金の額または 出資の総額 | 常時使用する従業員数 | 常時使用する従業員数 | |
卸売業 | 1億円以下の法人 | 100人以下 | 5人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下の法人 | 100人以下 | 5人以下 |
小売業 | 5,000万円以下の法人 | 50人以下 | 5人以下 |
上記以外 | 3億円以下の法人 | 300人以下 | 20人以下 |
②事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内であること
事業場内の最低賃金が、地域別の最低賃金と比較して30円以内の差額である場合が対象となります。
例えば、地域別最低賃金が900円の地域で、事業場内最低賃金が910円や930円の場合、対象となります。
③不交付要件がないこと
“交付申請書の提出日の前日から起算して3か月前の日”から“実績報告手続を行った日の前日または賃金額を引き上げてから6か月を経過した日”のいずれか遅い日までの間に、従業員の解雇や退職勧奨、賃金の引き下げなどが行われていないことが条件です。
また、労働関係法令に違反している場合や、国または地方公共団体から業務改善助成金と同じような内容の補助金などの交付を受けている場合も不交付要件となります。
業務改善助成金の対象者として申請を検討する際には、これらの支給要件を注意深く確認し、適切な準備を行うことが重要です。
具体的な詳細や要件については、業務改善助成金のマニュアルを参照するか、業務改善助成金コールセンターへお問い合わせください。
※参考:厚生労働省HP『業務改善助成金 申請マニュアル』 001082022.pdf (mhlw.go.jp)
※業務改善助成金コールセンター 電話番号:0120-366-440(受付時間平日8:30~17:15)
助成金を受給するための取り組み
業務改善助成金を受給するためには、以下の取り組みが必要です。
①賃金引き上げ計画の策定
雇入れ後3か月を経過した従業員のうち、事業場内で最も低い時間当たりの賃金額を一定額以上引き上げる計画を策定します。
なお、助成金を申請するためには、『事業実施計画書』と賃金引き上げ計画を記載した『交付申請書』を作成し、都道府県労働局に提出する必要があります。
②事業場内最低賃金の引き上げ
引き上げ後の賃金額を就業規則などに明記する改正を行います。
また、引き上げ後の賃金額を適用し、実際に従業員への支払いを行います。
賃金の引上げに伴う改正と適用は、交付申請後であれば実施時期は自由です。
ただし、引き上げた賃金は、原則として事業実績報告書の提出日までに支払う必要がありますので注意しましょう。
③生産性向上に必要な設備投資などの実施
交付決定の属する年度の2月28日までに、生産性向上および労働能率の増進に必要な設備投資などを行い、費用の支払いまで完了させます。
下記の表の“生産性向上等に資する設備投資等の経費区分”に該当する費用を支払った場合、予算の範囲内で業務改善助成金が支給されます。
生産性向上等に資する設備投資等の経費区分 |
謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、原材料費、 機械装置等購入費、造作費、人材育成・教育訓練費、経営コンサルティング費、委託費 |
②や③の取り組みは、『事業実施計画書』を申請し、交付決定後に取り組む必要があります。
交付決定前におこなった設備投資などは、助成の対象となりませんので注意しましょう。
個人事業主の業務改善助成金受給について
個人事業主の方々も、業務改善助成金を利用できるかどうかについて疑問を抱かれることでしょう。
その答えは、個人事業主でも業務改善助成金を利用することが可能だということです。
実際に、「対象者」の章で述べた“小規模事業者の定義”によれば、従業員数が20人もしくは5人より少ない場合、個人事業主も小規模事業者に含まれます。
また、令和4年12月には、小規模事業者がより利用しやすくなるように配慮がなされました。
事業場規模が30人未満の事業者に関しては、助成上限額が引き上げられています。
これにより、個人事業主も含め、小規模事業者はより大きな支援を受けることが可能となっています。
個人事業主の方々も、支給要件を満たし、受給するための取り組みを行えば、業務改善助成金を受給することができます。
自身の事業状況と要件を確認し、助成金を活用して業務の改善に取り組むチャンスをぜひご検討ください。
まとめ
業務改善助成金は、賃金アップを行うことを目指し、生産性向上および労働能率の増進に必要な設備投資などを行う中小企業や小規模事業者を対象に展開されています。
中小企業や小規模事業者は、一定の基準を満たすことで助成金の対象となり、個人事業主も同様に受給することができる助成金です。
助成金の申請手続きや条件をしっかりと理解し、自身の事業の発展に活用することが重要です。
助成金を利用することで、従業員のモチベーション向上や定着率の向上などの賃金アップのメリットを上手に使い、競争力を強化する一歩となることでしょう。
人材獲得競争で優位に立つためにも、中小企業はもちろん、小規模事業者や個人事業主の方々も、積極的に活用していただきたい助成金の一つです。
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