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【2023年】キャリアアップ助成金とは?正社員化コースの条件や注意点

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目次

多様な働き方が選択可能な現代社会において、自身の志向に合った働き方として非正規雇用を選ぶ人々が増える一方で、正社員への願望を抱きながらも難しさを感じている人々も存在します。

非正規雇用労働者の方々にとって、自身のスキルや経験を活かし、成長し続けるための正社員へのステップアップは、容易ではないかもしれません。

しかし、非正規雇用労働者の方々の意欲を高め、潜在能力を最大限に引き出すことは、企業の生産性を向上させ、豊かな人材を確保する上で極めて重要な要素となります。

このような課題に対処するために、キャリアアップ助成金の存在が注目されています。

キャリアアップ助成金は、労働者の職業的成長を支援し、職場内での発展機会を提供するための貴重なツールです。


今回は、キャリアアップ助成金について、制度の概要や適用条件、申請手続きについて詳しく掘り下げ、わかりやすく解説していきます。

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キャリアアップ助成金とは?

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者(有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者など)の企業内でのキャリアアップや待遇改善を促進するために、正社員化、賃金引上げなどの取組みを実施した事業主を支援する制度です。

この助成金は、『正社員化支援』と『処遇改善支援』の2種類に大別され、『正社員化支援』には2コース、『処遇改善支援』には4コースの全部で6コースが用意されています。

正社員化コースについて

正社員化コースは、キャリアアップ助成金の『正社員化支援』に該当するコースの1つです。

正社員化コースは、事業主が非正規雇用労働者を正規雇用労働者に正社員化、または派遣労働者を直接雇用した場合、助成を受けることができる助成金です。

本コースにおける“正社員”の定義は、同一の事業所内の正規雇用労働者に適用される就業規則が適用される従業員であり、賞与または退職金の制度と昇給制度が適用される従業員となります。

正社員化コースの助成額

企業区分条件助成額
中小企業有期雇用非正規労働者→正社員化57万円
無期雇用非正規労働者→正社員化28万5,000円
大企業有期雇用非正規労働者→正社員化42万7,500円
無期雇用非正規労働者→正社員化21万3,750円

正社員化コースの1人当たりの助成額は以下のとおりです。

また、以下の措置によっては加算が受けられる場合があります。

措置内容有期雇用労働者無期雇用労働者
派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合
28万5,000円28万5,000円
対象者が母子家庭の母等または父子家庭の場合9万5,000円4万7,500円
人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化した場合9万5,000円4万7,500円
うち、自発的職業能力開発訓練または定額制の訓練修了後に正社員化した場合11万円5万5,000円
「勤務地限定・職務限定・短時間正社員」制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合(1事業所当たり1回のみ)【中小企業】9万5,000円
【大企業】7万1,250円
【中小企業】9万5,000円
【大企業】7万1,250円

中小企業の定義について

以下の表は、中小企業基本法によって定められている中小企業の定義です。中小企業は、資本金の額・出資の総額または常時使用する従業員の数、いずれかの要件を満たす場合、中小企業となります。

業種資本金の額
出資の総額

常時使用する
企業全体の労働者
一般産業(下記以外)3億円以下の法人

300人以下
卸売業1億円以下の法人100人以下
サービス業5,000万円以下の法人100人以下
小売業5,000万円以下の法人50人以下

※出典:厚生労働省HP キャリアアップ助成金パンフレットより抜粋 001083208.pdf (mhlw.go.jp)

本助成金における非正規雇用労働者の要件


キャリアアップ助成金「正社員化コース」の対象となる労働者は、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 賃金の額や計算方法について、正規雇用労働者とは異なる就業規則などが適用されており、その適用期間が通算6か月以上ある有期雇用労働者または無期雇用労働者であること。また、派遣労働者の場合は、6か月以上の期間継続して派遣先の事業所における業務に従事していること。
  2. 入社時に、正規雇用労働者として雇用することを約束して雇い入れられた有期雇用労働者などでないこと。
  3. 正社員化の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所または関連会社において、正規雇用労働者として雇用されたことがある者、請負もしくは委任の関係にあった者、定年を迎えた者でないこと。
  4. 正社員化を行った適用事業所の事業主または取締役の、3親等以内の親族以外の者であること。
  5. 支給申請日において、正社員化後の雇用区分の状態が継続し、離職していないことはもちろん、有期雇用労働者または無期雇用労働者への転換が予定されていない者であること。
  6. 正社員化後の雇用形態に定年制が適用される場合、正社員化の日から定年までの期間が1年以上であること。

以上が、キャリアアップ助成金「正社員化コース」の対象となる非正規雇用労働者の要件についてです。

入社時に、正規雇用労働者など多様な正社員として雇用する約束をして雇用されていた場合は助成金の対象外となりますし、支給申請日において当該制度を継続して運用している事業主でないと、助成金を受給することはできません。

上記の要件を確認の上、助成金の手続きを行うようにしましょう。

キャリアアップ助成金「正社員化コース」の受給要件

キャリアアップ助成金「正社員化コース」を受給するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

①キャリアアップ計画

正規雇用労働者に転換する前日までに、『キャリアアップ計画』を作成し、管轄の労働局へ提出していることが最初の要件となります。

キャリアアップ計画を提出し、管轄労働局長から受給資格の認定を受けた事業主が、助成金を受給することができます。

キャリアアップ計画に記載する計画開始日は、計画書提出日の翌日以降にする必要があります。

②制度の規則化

有期雇用労働者などを正規雇用労働者に転換する制度(試験などの適切な手続きや要件、転換時期)を、就業規則または労働協約などに規定していることが2番目の要件となります。

③正社員化

2番目の転換制度の規定に基づいた順序で、雇用する有期雇用労働者などの正社員化手続きを行う必要があります。

そして、正社員化された従業員を、正社員化後6か月以上の期間継続して雇用し、転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額して支給していることが3番目の要件となります。

なお、所定外労働時間に応じて支払われる“休日手当”や実費補填となる“通勤手当”など、賃金3%以上増額の際に含めることのできない手当もあるため、注意が必要です。

 また、正社員化後に正規雇用労働者として試用期間の適用がある場合には、試用期間終了日の翌日が正社員化した日とみなされますのでご留意ください。


キャリアアップ助成金「正社員化コース」の申請から支給まで

キャリアアップ助成金「正社員化コース」の申請から支給までの手順は以下の通りです。

①キャリアアップ計画の作成・提出

正規雇用労働者に転換する前日までに『キャリアアップ計画』を作成し、管轄の労働局に提出します。

②就業規則の改定

有期雇用労働者などの正規雇用労働者への転換規定がない場合は、就業規則の改定をおこないます。

③就業規則などに基づく正社員化

就業規則などに規定されている転換制度の規定に基づき、雇用する有期雇用労働者などの正社員化をおこないます。

④賃金の支払い

正社員化後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額して支給します。

⑤支給申請

正社員化後6か月分の賃金を支払った日の翌日から起算して、2か月以内に申請する必要があります。

⑥助成金受給

労働局の審査通過後、助成金を受給することができます。


以上が、キャリアアップ助成金「正社員化コース」の申請から支給までの一般的な手順です。

助成金の具体的な申請方法や必要な書類については、厚生労働省のウェブサイトを参照するか、管轄の労働局にお問い合わせいただくことをお勧めします。

また、就業規則の改定を要する場合には、専門家である社労士に相談することもお勧めします。

社労士は、就業規則の改定手続きを行うだけでなく、助成金の申請代行を行うことも可能です。

キャリアアップ計画の作成段階から、社労士に相談しながら手続きを進めることが可能ですので、ぜひご検討ください。

※参照;厚生労働省HP キャリアアップ助成金パンフレット  001083208.pdf (mhlw.go.jp)

キャリアアップ助成金「正社員化コース」についての注意点


キャリアアップ助成金「正社員化コース」を申請する際、申請要件を守ることはもちろんですが、何点か注意すべき点があります。

  • 正規雇用労働者への転換制度の規定と異なる手続き順序や要件、実施時期などで転換した場合は不支給となります。そのためにも、自社の転換制度の規定をきちんと理解しておくことが大切です。
  • 1年度につき、1事業所が支給申請できる上限人数は20人です。20人以上の申請はできませんので、ご留意ください。
  • 助成額が加算の対象となる「人材開発支援助成金」を、キャリアアップ助成金と申請する場合の手続きが、2023年度より簡素化されました。
    具体的には、人材開発支援助成金における『訓練実施計画届』(訓練様式第1号など)の作成・提出をおこなうことで、キャリアアップ助成金「正社員化コース」における『キャリアアップ計画』とみなすことができるようになりました。
    なお、この手続きを1本化するためには、『訓練実施計画届』の裏面にある追加項目を記載する必要があります。
  • 助成金の受給後、会計検査院の検査が行われる場合があります。
    その際、検査に協力することに同意していないと、助成金を受給することができません。
    また、労働局に支給申請した書類は、支給決定されたときから5年間は保存していなければなりません。誤って破棄することの無いよう、注意しましょう。

その他にも、不支給要件や注意点が多くあります。

それらについては、キャリアアップ助成金「正社員化コース」のマニュアルに記載されていますので、ぜひご参照ください。

※参照:厚生労働省HP キャリアアップ助成金パンフレット 001083208.pdf (mhlw.go.jp)

まとめ

この助成金は、非正規雇用労働者の正社員化を支援し、企業内のキャリアアップを促進する重要な制度です。

申請時には要件の遵守や、様々な注意点に留意する必要がありますが、しっかりと計画を立て、手続きを進めれば、多くの企業が従業員の成長と企業の発展に貢献できる助成金制度です。


キャリアアップ助成金に関する詳細な情報は、インターネット上においても様々なサイトで紹介されています。

しかし、最新の正しい情報は、厚生労働省の公式ウェブサイトやマニュアルを適切にご参照いただき、助成金を最大限に活用しましょう。



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